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「ここまで着いてきたんだ。もう知らねぇぞ」
美海はコクリと頷くだけだ。
そんな美海に痺れを切らしてか土方は頭をガシガシと掻いた。そして荒っぽく口を開く。
「俺は死なねぇ。総司も死なねぇ。だからお前も死ぬな。女でもできるんだってところを見せつけろ」
美海は驚いたように目を見開くと大きく頷いた。
「はい!もちろんです!」
「まぁ土方さんより美海さんの方が強いですけどね」
沖田がボソリと呟き、クスクスと笑う。
その通りなのだが、土方は顔を真っ赤にすると
「うるせぇ!」
と怒鳴ってスタスタと行ってしまった。【植髮效果】想植髮後毛囊更穩定?術後保養大全! -
美海と沖田は顔を見合わせると大きな声で笑った。
「総司~!美海~!早く来いよ~!」
原田が馬鹿デカイ声で叫んでる。
隊士達もこちらを向いて笑っているが、どこか凛としている。
美海には彼らがいつも以上に頼もしく見えた。
「今行きます!」
二人は手を取り合って走り出す。
この先も彼らとなら乗り越えて行けるような不思議な安心感を美海は覚えた。
なんやかんやと永倉、原田に茶化されている間に彼らの故郷についた。
そこそこ大きな屋敷の前で立ち止まる。
隣には道場が付いている。
「ここが試衛館ですね」
美海がさも当たり前かのように言った。
試衛館時代からの古株は驚いたように美海を見ている。
美海は道場を見て直ぐ様ここが試衛館だと理解したのだ。
「なるほど!ここですか!」
市村も大きく頷く。
ここで、沖田さんは9歳の頃から。
土方さんはグレながらも通ったのか。
ここで沖田隊長の才能が覚醒。
副長の素晴らしき強さを生み出した。
一体どんな…。
沖田が何か言っていたが美海と市村は自分の世界に入りきっていて全く気付かない。
ガラッ
土方が戸惑いもなく戸を開けた。
「彦五郎さーん!土方です!」
彦五郎さん!
つまり近藤さんのお父さん!!
数秒後にドタドタと足音が聞こえる。
「その声は!と!歳か!?」
バタバタと姿を現した男。
この人が…。
確かに説明できない覇気がある。
土方の頭を撫でていて土方は照れくさそうにしている。
「は、はじめまして!あなたが天然理心流の先生であって局長のお父様ですね!?」
市村は早速頭を下げている。
彦五郎と呼ばれた人物は唖然としている。
「はじめまして!立花です!近藤局長にはいつもお世話になっています!」
美海も手を差し出した。
彦五郎という男はニヤリと笑うと握手を返してきた。
「おう!俺が天然理心流3代目であり勇の父の近藤彦五郎よ!」
市村は目を輝かす。
ゴンッ
「彦五郎さん!こいつら只でさえ馬鹿なんだから信じてしまいますよ!」
「すまんすまん。それより歳、そのきしょくわりぃ敬語やめろ」
男は土方の容赦ないゲンコツが落ちた頭を擦りながら笑う。
「久しぶりだ。彦五郎さん」
二人は抱き合った。
美海と市村の頭上には『?』が飛んでいる。
「馬鹿だなお前ら!」
原田がゲラゲラと笑う。
美海はムッと眉を寄せた。
「お前らとは失礼ですね!鉄くんは馬鹿でも私は馬鹿じゃありませんよ!」
「そうだそうだ!」
美海の失礼な反論に加勢する市村。
「鉄。それでいいのかよ…」
永倉は哀れみの目を向けた。
「いいんです!先輩が…それで幸せになれるなら…!」
「て…鉄くん…!」
二人は抱き合う。
「あの子達はなんだ?えらく若いけど新撰組の日雇いお笑いか?」
男は遠くから笑いながら土方に聞いた。
「れっきとした隊士だ…。あっちの茶髪が『黄金の蜂』立花美海、あっちのガキンチョが俺の小姓で市村
土方が悩みに明け暮れている間、山南は長時間縁側に座って考えを巡らせていた。
もうすっかり日は沈みかけて空は赤く染まっている。
さっきのあれは言い過ぎたかもしれない…。土方くんカンカンに怒ってるだろうな…。やだなぁ。
先程の発言は全てが本心な訳ではない。
しかし山南という男。温厚そうにみえて以外に頑固な面があるのだ。
バタバタバタバタ!
「「山南さん!」」
「沖田くんに美海くん!」
山南がその声に反応して振り向くと隊服姿の美海と沖田がいた。巡回帰りだろう。
「どうしたんだい?そんな息を荒くして」
「どうしたって山南さん!大丈夫ですか!?」
「土方さんがひどいこと言ったって!」
「あぁ」
山南は苦笑いした。
「あれは私が悪いから仕方ないんだ」
そう笑う山南の隣に美海と沖田が座った。
「あまり気にしないほうがいいですよ?」
沖田がそう言う。
「そうですよ!あの人は口が悪いだけですから」
美海も同意した。
「ははは。君らにはよく元気づけられるよ。ありがとう。沖田くんは二回目だね」
「そうですね」
「あ!私何かお菓子持ってきます!」
美海は立ち上がって台所へ向かった。
「前に沖田くんが見方を変えて見れば良いって言ってくれただろ?」
「はい」
「私なりに頑張ったんだけどね。どうやら駄目そうだ。沖田くんみたいに思えない」
山南は足元の砂利を蹴った。
「さっきね。私を副長に戻してくれと頼みに行ったんだ」
沖田は目を見開いている。【植髮效果】想植髮後毛囊更穩定?術後保養大全! -
「そしたらね。副長は一人でいい。剣を握らないやつに務まるかって言われたんだ。だから思わずひどいことを言ってしまった…」
「副長は一人でいい。かぁ…」
沖田は手に息を吹きかけた。息が真っ白だ。寒い。
お互いが沈黙になる。
もはや沖田もなんとも言いようがない。山南が苦しい立場なのも十分に分かっている。だが、土方の言うことも一理ある。
「元に戻れないのかなぁ…?」
沖田が呟いた。
山南は不思議そうな顔で見ている。
「土方さんが地図書いて策略立てて山南さんが調整する。あれでよかったのになぁ」
沖田は遠回しに伊東の参謀というポストがいらないと言いたいのだ。
「あの頃はよかったな。素直に笑ってられた。今は別に楽しいわけでもないのに笑っている。皆変わったからね」
あの頃はよかった。と言っても今は今だ。過去に戻れるわけでもなく、ずっとそのままで止まっていられるわけでもない。
時は前に進む一方だ。
その頃の美海は…。
カッチャカッチャカッチャカッチャ。
お盆の中の皿をぶつけながら道を歩いている。
「はー…。重い」
ふと土方の部屋の前を通った。
「………」
ススススス。
前に進んでいた足を止め、そのまま後ろに戻る。
ガラッ
「土方さん!あんま山南さんにひどいこと言わないでくださいよ!!」
「あ゛?」
振り返った土方はいつに増して不機嫌そうだ。
いつもは勝手に入ると怒るのだが今日は怒らない。
ビクッ!
そんな土方に美海は一瞬怯む。
「だだだだだから…山南さんに…」
「わかってる!わかってるんだ…」
土方はなんだか悲しそうな顔をした。
「わかってるんだよ…」
「土方さん?」
「わかってるんだ。俺が山南さんを苦しめてることも。
わかってるんだ。隊を強くしたいのも俺の自己満足だって。
山南さんの言ってることも正論だって」
土方はそう言うと伏く。
「全部わかってるんだよ…。
でもどうしたらいいんだよ…。
なんでこうなったんだよ…」
土方さんがこんなんになるなんて。珍しい。
美海がおもむろに口を開いた。
「土方さんはしばらくここで悩んでてください」
「へ…?」
「なんでこうなったとかどうしたらいいとか。そんなのわかりませんよ。自分しかわからないでしょ?だから一人でゆっくり悩んでください。私はお菓子持っていかなきゃ駄目なんで」
ガラッ
「なんだよ…。あいつは女中かよ…」
土方は苦笑いだ。
カッチャカッチャカッチャカッチャ…
「お待たせしました~!」
美海がそう言ったが沖田と山南はなんだか元気がない。
どうしたんだろ?
「どうぞ」
カチャン…
「上様。御台様のお越しにございます」
座敷の入口に控えていた小姓が、平伏の姿勢で告げてきた。
「お濃が?」
と信長がくや否や、品々でごった返す座敷の中へ、慌ただしく濃姫が入って来た。
「失礼致しまする! 上様、のお話しが──」
「控えよッ!」
濃姫が姿を現すなり、信長はキッとが妻を睨み付けた。
「御台ともあろう者が廊下で声を張り上げるとは何事じゃ! 立場をえぬか」
夫から叱責を受け、濃姫は慌てて座敷の入口に膝を折ると
「…これは、ご無礼を致しました──。されど、どうしても上様に、お伺いしたき儀がありましたもので」
「見て分かる通り、今は取り込んでおる。後に致せ」【植髮效果】想植髮後毛囊更穩定?術後保養大全! -
「後には出来ませぬ! 今すぐにお伺いしたき、上様に関わるなのでございます!」
床の上に素早く両の手をつかえ、上段の夫に強い眼光を向けた。
茶道具を検めていた信長の双眼が静かに持ち上がり、濃姫をそうに見据える。
「儂に関わる大事とは何じゃ?」
「畏れながら、この場に居たままでは申し上げられませぬ」
「ならばう参れ」
「はい…」
濃姫は一礼すると、齋の局と共に、座敷に並べられた品々の間を縫うように歩いてゆき、上段に座す信長のらに控えた。
「畏れながらおね致します。此度のご出陣、備中へかれる途上で、
都に立ち寄られるというのは、まことにございましょうか? 聞けば、二、三日はご滞在のご予定とか」
どこか厳しい顔付きで訊ねる濃姫に
「火急と申す故、何のことかと思えば──ああ、まことの話じゃ」
信長はにべもなく答えた。
「京にて茶会をすことに致したのだ、多くの公家衆を集めてのう。これを見れば分かるであろう」
そう言って、目の前に広がる茶道具の数々を手で示した。
「ちょうど今、その茶会で披露する名器を選んでおったところよ」
「茶会…。ご出陣を控えておられるのに、何故にわざわざ茶会など」
「ただ茶会を催すだけに京に滞在する訳ではない。 儂が朝廷から、任官を求められている旨は知っておるな?」
「はい。関白などの重職にお就き下さいませと、武家より上様に申し入れがあった件にございますね」
先の天正六年(1578)に右大臣(兼右近衛大将)を辞任してより、官職に就いていなかった信長のもとへ、
武家伝奏・を通して、関白か大将軍のいずれかの官職に就くよう、朝廷から※打診があったのである。
「答えを先延ばしにしておったが、公家衆も集まること故、正式にその返答をしようと思うてな」
「それでしたら、何も今でなくとも」
「無論それだけの為ではない。此度の茶会はひとえに、先々へのえじゃ」
「…備えと申されますと?」
「茶会には、博多の豪商・を招いておる。 全国平定も目前とは申せ、儂の日の本での戦は、
まだ終わった訳ではない。中国には毛利、四国にはと、蹴散らすべき敵は多くいる。
──お濃。そんな者共と戦う為には、知恵や武力、の他に、何が必要であると思う?」
(※…信長からの申し出であったとする説もある。三職推任問題)
「…普通に考えるのであれば、鉄砲や火薬など、戦を行うのに必要な物資にございましょうか?」
信長は「うむ」と頷いた。
「やり手の豪商と名にし
突然の事態に家老たちが口々に声を上げると
「狼狽えるでない──。戦意を無くした者を無理やり戦場に連れて参ったところで、戦力になるとは思えぬ。
出陣せぬ…、それならそれで一向に構わぬ。良いか!我らは予定通り明日出陣致す。やる気のない者になど構うでない!」
林兄弟の出兵拒否など取るに足らぬ事とばかりに、信長は主君らしい凛然たる態度で言い放った。
信長がここまで言い切ってしまっている以上、家老らにそれを覆す手立てはない。
信長が道三を信じるように、彼らもまた、この破天荒な主君を信じて付いて行く他なかった──。
林兄弟が与力(よりき)である荒子の前田与十郎の城へ退去したという話を漏れ聞きながら、
翌二十一日、信長は“ものかは”なる気に入りの馬に乗って、威風堂々と出陣した。
その日は熱田に一泊し、翌日には今川勢の標的となっている緒川城へと赴くべく船で海路を進む予定であった。
ところが
ゴォ…、ゴォォォ……
予想外な事は重なるもので、翌二十二日は朝から凄まじい強風に見舞われていた。
「かように風が強くては、とてもではありませぬが船など出せませぬ!」
「このような状況で船を出せば転覆の大事に至るのは必定!どうか、渡海は明日に持ち越されませ!」
船頭や舵取りたちも、当たり前のように船を出すのに猛反対した。
しかし信長は
「かつて、源義経と梶原景時(かじわらかげとき)が、逆方向におよぐ逆櫓(さかろ)をつけるか否かで言い争うた折にも、
これくらいの大風が吹いていたであろう。構わぬ構わぬ、早よう船を出すのだ!」
と言って、強引に出港。
幸い大きな被害もなく、本来ならば二十里ほどかかる道のりを、僅か半刻(約1時間)で押し渡り、無事に着岸したのである。
「──といった次第にございまして、殿はその翌日、緒川城にて水野様のご子息・信元様とお会いになられて、
近辺の様子などを詳しくお伺いになり、そのまま城中にお泊まりになられた由にございます」
「左様であったか。 …にしても、源義経の話を持ち出されて無理やり船を出させた辺りなど、ほんに殿らしい」
濃姫が三保野を通じて、此度の戦の詳細を伺ったのは、それから三日後。
今川勢との勝敗がついた後の、同月二十五日のことであった。
「そして昨日、殿は夜明けと共にご出陣あそばされ、今川勢のおわす村木の砦を攻撃なされたのですが、その折のご布陣分けが、これまた殿らしゅうて…」
「聞いておる。堀が非常に深き、城内で最も堅固な南方を自らお引き受けになられたとか?」
「そうなのでございます。砦の北方は天然の要害で、守備兵もいなかったらしいのですが、
大手門(表門)のある東方は叔父上の信光様に、搦手門(裏門)の西方は忠分様にお任せになられて、殿は最も過酷な南方を受け持たれ、兵を配置なされたのです。
若き親衛隊方は我劣らじと堀を登り、突き落とされては這い上がるを繰り返されたそうで、負傷した者、死んだ者の数も分からぬ程であったとか」
と、三保野は慌てて止めようとしたが、信長はそれを気にも留めず
「如何する?別に無理して来なくても構わぬが」
見下ろすようにして濃姫の面差しを眺めた。
『 今まで私を外に誘って下されたことなどなかったのに、何故今夜に限ってこんなに──』
彼がこんなにも外出を促して来ることを、濃姫は些か不思議に思っていた。
何故だか分からないが、濃姫は信長に試されているような、そんな気がしていた。【植髮效果】想植髮後毛囊更穩定?術後保養大全! -
姫は数秒考え込むと、ややあって毅然とした表情で頷いた。
「分かりました。参ります」
「姫様っ!?」
「三保野、後はそなたに任せましたぞ」
濃姫はそう言い残すと、満足気に微笑む信長の背に従って、廊下を足早に進んでいった。
「開門ーっ!!」
二人はそのまま外に出ると、城門の前に待たせてあった信長の愛馬に乗り、豪雨と強風の中を物凄い勢いで駆け抜けていった。
その後ろを、同じく馬に乗った勝三郎ら数名の小姓たちが続く。
「──儂にしっかり掴まっておけ!振り落とされるなよ濃!!」
「──はい…!!」
濃姫は信長の腰にしっかりと腕を回し、自分の左頬を相手の背中に当てるようにして、ぴったりとくっ付いた。
細い身体の割には、信長の背中は広くて逞しく、そして温かかった。
不思議だ──。
身体は雨に濡れ、雷鳴も轟いているのに、少しの不快感、恐怖感などは一切ない。
寧(むし)ろ、安心感の方が大きかった。
この背中の後ろにいれば、きっと何も怖いものはない…。
濃姫は信長の温もりを感じながら、彼の腰に回していた自分の腕に、グッと力を込めていた。
二人が村に着くと、既に男たちの手による堤防の修理が始まっていた。
その様子を見渡せる小高い場所で馬をとめると
「お濃、あれを見よ」
信長は堤防を直す男たちに指を差した。
「あそこで作業しているのは村の民たちじゃが、大半は相撲の試合でかき集めた儂の家来たちじゃ」
「殿の!?」
確かに作業をする殆んどの男たちが、体格の良い屈強な若者ばかりである。
「お濃。この世を生きる人々は、身分や立場によって仕事も役割も違う。
民百姓は米や野菜を作り、武士は戦場で闘う…。人にはそれぞれ本分というものがあるのだ。
しかし今は、戦が起こる度に村から若者たちが集められ、兵として戦場に駆り出されておるのが現状じゃ」
「…それが世の常にございます故」
「儂はその常を変えたいのだ。戦を行う度に村から働き盛りの若者が消えたのでは、
民百姓は本来の仕事に打ち込めぬ上、生産や流通も止まってしまう。これでは国が貧しくなり、戦も長くは続けられぬ」
「……」
「自分の意のままに動かせる軍隊を持てるようになれば、民たちは各々の務めに専念出来、国も豊かに保っていられるのだ。
儂はそういう世を作りたい。今の儂の力では無理かも知れぬが、己が己らしく生きられる豊かな世を……いつか、この手で」
開かれた信長の右手が、掌に爪が食い込むかと思われるほど、固く握り締められた。
『 ああ…。やはりそうだった。信長様、このお方はやはり── 』
雨水が滴る信長の横顔に、濃姫は希望の光を帯びた、それはそれは強い眼差しを向けていた。
「殿ー!!信長様ー!!」
するとそこへ、傘と蓑(みの)を身に付けた竹千代が、泥濘(ぬかるみ)に気を付けながら小走りでやって来た。