と、三保野は慌てて止めようとしたが、信長はそれを気にも留めず
「如何する?別に無理して来なくても構わぬが」
見下ろすようにして濃姫の面差しを眺めた。
『 今まで私を外に誘って下されたことなどなかったのに、何故今夜に限ってこんなに──』
彼がこんなにも外出を促して来ることを、濃姫は些か不思議に思っていた。
何故だか分からないが、濃姫は信長に試されているような、そんな気がしていた。【植髮效果】想植髮後毛囊更穩定?術後保養大全! -
姫は数秒考え込むと、ややあって毅然とした表情で頷いた。
「分かりました。参ります」
「姫様っ!?」
「三保野、後はそなたに任せましたぞ」
濃姫はそう言い残すと、満足気に微笑む信長の背に従って、廊下を足早に進んでいった。
「開門ーっ!!」
二人はそのまま外に出ると、城門の前に待たせてあった信長の愛馬に乗り、豪雨と強風の中を物凄い勢いで駆け抜けていった。
その後ろを、同じく馬に乗った勝三郎ら数名の小姓たちが続く。
「──儂にしっかり掴まっておけ!振り落とされるなよ濃!!」
「──はい…!!」
濃姫は信長の腰にしっかりと腕を回し、自分の左頬を相手の背中に当てるようにして、ぴったりとくっ付いた。
細い身体の割には、信長の背中は広くて逞しく、そして温かかった。
不思議だ──。
身体は雨に濡れ、雷鳴も轟いているのに、少しの不快感、恐怖感などは一切ない。
寧(むし)ろ、安心感の方が大きかった。
この背中の後ろにいれば、きっと何も怖いものはない…。
濃姫は信長の温もりを感じながら、彼の腰に回していた自分の腕に、グッと力を込めていた。
二人が村に着くと、既に男たちの手による堤防の修理が始まっていた。
その様子を見渡せる小高い場所で馬をとめると
「お濃、あれを見よ」
信長は堤防を直す男たちに指を差した。
「あそこで作業しているのは村の民たちじゃが、大半は相撲の試合でかき集めた儂の家来たちじゃ」
「殿の!?」
確かに作業をする殆んどの男たちが、体格の良い屈強な若者ばかりである。
「お濃。この世を生きる人々は、身分や立場によって仕事も役割も違う。
民百姓は米や野菜を作り、武士は戦場で闘う…。人にはそれぞれ本分というものがあるのだ。
しかし今は、戦が起こる度に村から若者たちが集められ、兵として戦場に駆り出されておるのが現状じゃ」
「…それが世の常にございます故」
「儂はその常を変えたいのだ。戦を行う度に村から働き盛りの若者が消えたのでは、
民百姓は本来の仕事に打ち込めぬ上、生産や流通も止まってしまう。これでは国が貧しくなり、戦も長くは続けられぬ」
「……」
「自分の意のままに動かせる軍隊を持てるようになれば、民たちは各々の務めに専念出来、国も豊かに保っていられるのだ。
儂はそういう世を作りたい。今の儂の力では無理かも知れぬが、己が己らしく生きられる豊かな世を……いつか、この手で」
開かれた信長の右手が、掌に爪が食い込むかと思われるほど、固く握り締められた。
『 ああ…。やはりそうだった。信長様、このお方はやはり── 』
雨水が滴る信長の横顔に、濃姫は希望の光を帯びた、それはそれは強い眼差しを向けていた。
「殿ー!!信長様ー!!」
するとそこへ、傘と蓑(みの)を身に付けた竹千代が、泥濘(ぬかるみ)に気を付けながら小走りでやって来た。