「そんなもの知ってどうする。嫌な予感しかしないから教えないよ。その前に知らないけどね。」
もし知ってても絶対教えない。嫌な予感しかしないと繰り返した。
「んーじゃあ自力で見出すしかないですねぇ。やられっぱなしも癪なんで対抗策をと思ったんですけど。」
頑張りますと意気込みを伝えてくる三津に待て待てと箸を置いた。
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「逃げてるだけじゃ埒が明かないんですもん。」
それは分かるが余計に面倒くさくなる気しかしない。
親の心子知らずとはこの事か。親ではないがそれを身を持って知った気分。
明日は藩邸に行ってもいい?とせがんでくる三津に溜息をついた。
「うわぁ,今面倒くさいって思ってますね?」
「分かってるじゃないか。」
わざとらしく大きく目を見開いた三津に澄ました顔をする。
愛らしい口がへの字に曲がった。
「……小五郎さんに迷惑かけるのは嫌なんで諦めます。」
腑に落ちないが仕方ないと口を尖らせた膨れっ面でご飯をつついた。
その姿すら愛らしく思えて桂の目尻は垂れ下がる。
今晩は仲直りのしるしにちょっかい出してもいいだろうか。
高杉に,年中盛るな!と説教して帰って来たのに人の事が言えたもんじゃない。
「何にやにやしてるんですか?」
澄ましていたつもりだが下心が馬鹿正直に顔に出てたらしい。どうせやらしい事考えてたんでしょと言い当てられた。
「やらしい事とは?」
皆目見当がつかないよと今度こそ澄ました顔で笑って見せた。何なら具体的に教えてくれないか?なんて冗談を交えて。
「……得意分野の癖に。」
じっとりした目で吐き捨てられた。その言葉に澄ました顔は苦笑した。
「随分本音を言うようになったね。さては九一が何か言ったね?」
そう言えば私が帰って来るまで二人で何をしていたんだい?
むくむく芽生えた嫉妬心が色男の表情を引き攣らせる。
「べっ別に何も無いです。」
「ほんっとに嘘つくの下手。まぁいいよ。寝る時にゆっくり今日の出来事を報告する時間をあげるよ。」
この腕の中でじっくり語るといい。
色男ににっこりと微笑まれたのに寒気がしたのは気のせいだろうか。
逃さないよ?
そう言ってるとも取れる笑ってない目にそれ以上の言い訳は阻まれた。
「何か言えない事でもしてた?ん?」
「なっ……ぁっ……いっ!そんなっ……こ……っと!
んー……もう無理ぃ……。」
本当だから許して。下から見上げてくる桂に懇願した。
自分の上に跨らせてしっかり腰を押さえて下から律動を送れば三津は呆気なく果てて全身を預けてくる。
「そう,何もないならいいんだ。」
自分の上に倒れ込んできた体を抱き締めて愛おしそうに髪を撫でる。肌を通して三津の荒い呼吸が響いてくるのに酔いしれた。
『……嘘つくのしんどい……。』
隠し事するより素直に吐き出してしまえば良かったと今更襲ってくる後悔。
多分素直に言っても同じような罰を受けただろう。手加減なしの激しい罰。
だとしたら嘘をつく罪悪感なんてない方が良かった。
「うぅ……疲れたぁ……。」
今日一日本当に疲れた。
想定外の秘め事が二つと予定外の鬼ごっこ。
久しぶりの全力疾走の果てに容赦のない仕打ち。
倒れ込んだ桂の胸の上で三津は規則正しい寝息を立て始めた。
「おいおい最中に寝る?」
中途半端にされた私はどうすればいい?
「全く……。」
自由過ぎるにも程がある。こんな事は初めてだと寝顔を見て思うが,
『そんな事言えば昔の女と比べないでって怒るだろうなぁ。』
根に持たれるのは勘弁だが本音でぶつかって来てくれるなら,ひたすら謝るのも悪くない。翌朝目を覚した三津は絶叫しかけて口を手で塞いだ。
何も纏ってない体がほどよい温もりに包まれて,目の前には静かに寝息を立てる整った顔。