「ん,それがいい。武人さんが甘えてくるの待っちょき。」
赤禰が甘えてくるのは想像つかないやと笑って三津は仕事へと戻った。
赤禰の様子も入江の発言も気になったが訓練を見ていても普段通りだし変わった様子はなかった。
いつもと違う事と言えばやたらと目が合ったぐらい。
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やたら見られて気味悪がられてるのかもしれないと思い,それから三津は赤禰の視界に入らないように注意した。
それから三津はフサと町へ出掛けようとしたところへ赤禰がやって来た。
「一緒に行っていい?」
男前に笑顔でそう言われたら断る訳にはいかない。三津もフサも全力で頷いた。
「良かった。断られるかと思った。さっきから三津さん俺の事避けちょるから。」
「え!?違います!違います!」
まさかそう思われていたとは。今度は全力で首を横に振った。
「そう?すんげぇ目ぇ合っとったのに急に視界から消えたけぇ。それ何かの作戦?」
「いやいや目が合い過ぎて気持ち悪いって思われたら嫌やから見えん所におっただけで……。」
寧ろそれが作戦だとしたら何の作戦だと言うのか。「俺の方が嫌われたかと思ったわ。ちらちらこっち見て気持ち悪い男やなって思われたかと思った。」
勘違いなら良かったとからから笑いながら一緒に町へ向かった。
すると前からにやにやと下品な笑みを浮かべた武士二人が歩いてきた。
「どこの田舎侍かと思ったら寄せ集め部隊の赤禰やないか。」
突然目の前に立ちはだかって失礼な事を言う奴だなと三津とフサはムッとした顔をした。
『田舎って自分も田舎の人間やん。』
京の町に居た三津にすりゃあこっちは全体的に田舎だ。何を言ってるんだろうかと怪訝な目で二人を見た。
「女二人も侍らせてえぇご身分やないか。」
二人の蔑む発言は続くも赤禰は二人を睨むもののだんまりだった。
それを見て相手にしてはいけないのかと三津は察した。
「まぁお前はあの中でもまともな方か?元総督も目に余る奴やし松下村塾の四人衆も京で犬死やろ?大した事なかったんやなぁ。」
三津がぐっと拳に力を入れて煽りに耐えたがフサが反応してしまった。
「兄上達を悪く言わないでください!」
「フサちゃん!相手にしたらアカン!」
フサが無茶をするはずないが三津は念の為フサの両肩を抑えた。
「ん?その訛り……お前京の人間か?よう見たらまぁ可愛げはあるな。その都言葉で俺らの相手しろや。」
下品な笑みを浮かべて伸ばしてきた手を三津は叩き落とした。
「お断りします。亡くなったみんなや奇兵隊の事悪く言う人の相手なんかしません。」
「我々を愚弄するとどうなるか分かっちょるんか?」
「さあ?でも先に愚弄したのはあなた方ですし亡くなった人まで愚弄するあなた方は武士どころか男として落ちぶれてるんでろくな事せんのは分かりますよ。」
「この女!」
刀を抜こうとした右腕を赤禰が瞬時に掴んだ。
「言っとくがうちには女に刀抜くような落ちた男はおらんぞ。」
すると男はふんと鼻で笑った。
「俺らに手ぇ出したらまた総督が責任取って切腹やな。」
にやりと笑う男に赤禰は強く奥歯を噛み締めた。
「おい,そこまでにしとけや。撃ち抜くぞ。」
いつの間にか怒りを顕にした高杉がもう一人の男の頭に小型の銃を突きつけていた。
「よっ寄せ!こっちは世間話しちょっただけで……。」
「あ?あれが世間話?先鋒隊は頭悪いんか。一回死んでやり直せ。」
高杉はわざと銃口が見えるように眉間に構え直した。
「うっわぁぁぁ!!!」
男達は一瞬で走り去った。高杉はふんと鼻を鳴らして懐に銃をしまった。