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高杉は思わず伝令に来た隊士の胸ぐらを掴んでいた。
「と言う事は今が好機や。天は俺らに味方した!一気に攻め立てろ!」
「家茂様が……退却だっ!大阪へ向かう!」
徳川家茂の死去を知らされた小笠原は,勝機はないとして撤退を始めていた。
そして残された小倉藩は僅かな兵で戦うも,最後は城に火を付け降伏した。
こうして六月七日から始まった第二次長州征伐は約二ヶ月にも及んだが,最後は徳川家茂の死去により呆気なく幕を閉じた。
「終わっ……た?」
「あぁ,将軍様がお亡くなりになられた。一時休戦と向こうは言っちょるが状況的に我々の勝だ。これで風向きが変わるぞ。」 【植髮效果】想植髮後毛囊更穩定?術後保養大全! -
元周から聞かされて三津は呆然と立ち尽くした。
「松子,ぼさっとするな。疲れた男共が帰ってくる。存分に労ってやれ。お前もよく頑張った。お前の事は私が労う,またうちに来い。」
「……っはい!」
三津の威勢のいい返事を聞いた元周は目元を綻ばせ頭を撫でくり回してから帰って行った。
三津は屯所の前でセツと共にそわそわとみんなが帰ってくるのを待った。
「おっ!松子ー!勝ったぞぉー!!」
高々と拳を突き上げて歩いて来る高杉の姿が目に入った時には二人ともその場に泣き崩れた。
どんな状況かは知り得なかったが,先陣を切って激戦地に乗り込んだ高杉が無事だったのが何よりも嬉しかった。
それでもやはり犠牲者は少なく無い。帰らぬ人も多く居た。
「湯を張ってます。ゆっくり浸かってください。ご飯もいっぱい炊いてます。しっかり食べてください。
皆さんお疲れ様でした。お帰りなさい!」
「はぁー!帰って来た!嫁ちゃんっ!」
三津の笑顔に堪らず山縣が抱きついた。みんなから汚い!離れろ!と非難轟々だったが三津は背中に手を回してぎゅっと抱きしめた。
「帰って来てくれてありがとうございます。」まさかそうやって礼を言われるなんて思ってもなかった山縣は一瞬たじろいだ。
「おっ!俺は帰って来て当たり前や!ここにおっただけで!それなら高杉と入江達を労え!それに俺確かに汚い!」
臭うから離れろと抱きついた癖に引っぺがした。
「そやな。俺ら汚いけぇ先に風呂やな。みんな行くぞー。」
高杉の言葉におう!と返事をしてぞろぞろと屯所に入った。その最後尾に入江は居た。三津の前に立ってにっと笑った。それに三津も微笑み返した。
「ただいま。」
「お帰りなさい。」
二人で笑いあった。それを見たセツは邪魔者は退散するわねと隊士達と屯所に入って行った。
「私も抱擁したいが汚れてるから風呂の後にする。」
「気にしませんよ?」
「私が気にする。」
三津が両手を広げても入江はそれを断った。本当に汚くて臭うからと後退るほど。
「じゃあゆっくりお湯に浸かってください。私はご飯の用意して来ますから。」
三津は後でねと微笑んでからセツの元へ駆けて行った。
「はぁー……生き返る……。」
体を洗い,座ってゆっくりご飯を味わう。しばらくぶりに味わう一時に誰もが生きてて良かったと思った。長州の為なら命を惜しまんと戦に臨んだ彼らだが,やっぱり生きてこそだなと誰もが思った。元は農民や漁師達だ。そう思うのが当然だろう。
食べた後は広間で雑魚寝をしたり家族に会いに出掛けたり久方ぶりの自由な時間を過ごした。
だが伊藤だけはこれから桂の所へ向かうと言う。
「今日行かなアカンの?」
「ん,それがいい。武人さんが甘えてくるの待っちょき。」
赤禰が甘えてくるのは想像つかないやと笑って三津は仕事へと戻った。
赤禰の様子も入江の発言も気になったが訓練を見ていても普段通りだし変わった様子はなかった。
いつもと違う事と言えばやたらと目が合ったぐらい。
『私が気にして見過ぎなんよな……。』 【植髮效果】想植髮後毛囊更穩定?術後保養大全! -
やたら見られて気味悪がられてるのかもしれないと思い,それから三津は赤禰の視界に入らないように注意した。
それから三津はフサと町へ出掛けようとしたところへ赤禰がやって来た。
「一緒に行っていい?」
男前に笑顔でそう言われたら断る訳にはいかない。三津もフサも全力で頷いた。
「良かった。断られるかと思った。さっきから三津さん俺の事避けちょるから。」
「え!?違います!違います!」
まさかそう思われていたとは。今度は全力で首を横に振った。
「そう?すんげぇ目ぇ合っとったのに急に視界から消えたけぇ。それ何かの作戦?」
「いやいや目が合い過ぎて気持ち悪いって思われたら嫌やから見えん所におっただけで……。」
寧ろそれが作戦だとしたら何の作戦だと言うのか。「俺の方が嫌われたかと思ったわ。ちらちらこっち見て気持ち悪い男やなって思われたかと思った。」
勘違いなら良かったとからから笑いながら一緒に町へ向かった。
すると前からにやにやと下品な笑みを浮かべた武士二人が歩いてきた。
「どこの田舎侍かと思ったら寄せ集め部隊の赤禰やないか。」
突然目の前に立ちはだかって失礼な事を言う奴だなと三津とフサはムッとした顔をした。
『田舎って自分も田舎の人間やん。』
京の町に居た三津にすりゃあこっちは全体的に田舎だ。何を言ってるんだろうかと怪訝な目で二人を見た。
「女二人も侍らせてえぇご身分やないか。」
二人の蔑む発言は続くも赤禰は二人を睨むもののだんまりだった。
それを見て相手にしてはいけないのかと三津は察した。
「まぁお前はあの中でもまともな方か?元総督も目に余る奴やし松下村塾の四人衆も京で犬死やろ?大した事なかったんやなぁ。」
三津がぐっと拳に力を入れて煽りに耐えたがフサが反応してしまった。
「兄上達を悪く言わないでください!」
「フサちゃん!相手にしたらアカン!」
フサが無茶をするはずないが三津は念の為フサの両肩を抑えた。
「ん?その訛り……お前京の人間か?よう見たらまぁ可愛げはあるな。その都言葉で俺らの相手しろや。」
下品な笑みを浮かべて伸ばしてきた手を三津は叩き落とした。
「お断りします。亡くなったみんなや奇兵隊の事悪く言う人の相手なんかしません。」
「我々を愚弄するとどうなるか分かっちょるんか?」
「さあ?でも先に愚弄したのはあなた方ですし亡くなった人まで愚弄するあなた方は武士どころか男として落ちぶれてるんでろくな事せんのは分かりますよ。」
「この女!」
刀を抜こうとした右腕を赤禰が瞬時に掴んだ。
「言っとくがうちには女に刀抜くような落ちた男はおらんぞ。」
すると男はふんと鼻で笑った。
「俺らに手ぇ出したらまた総督が責任取って切腹やな。」
にやりと笑う男に赤禰は強く奥歯を噛み締めた。
「おい,そこまでにしとけや。撃ち抜くぞ。」
いつの間にか怒りを顕にした高杉がもう一人の男の頭に小型の銃を突きつけていた。
「よっ寄せ!こっちは世間話しちょっただけで……。」
「あ?あれが世間話?先鋒隊は頭悪いんか。一回死んでやり直せ。」
高杉はわざと銃口が見えるように眉間に構え直した。
「うっわぁぁぁ!!!」
男達は一瞬で走り去った。高杉はふんと鼻を鳴らして懐に銃をしまった。
「そんなもの知ってどうする。嫌な予感しかしないから教えないよ。その前に知らないけどね。」
もし知ってても絶対教えない。嫌な予感しかしないと繰り返した。
「んーじゃあ自力で見出すしかないですねぇ。やられっぱなしも癪なんで対抗策をと思ったんですけど。」
頑張りますと意気込みを伝えてくる三津に待て待てと箸を置いた。
「頼むから余計な事はしないで?」 【植髮效果】想植髮後毛囊更穩定?術後保養大全! -
「逃げてるだけじゃ埒が明かないんですもん。」
それは分かるが余計に面倒くさくなる気しかしない。
親の心子知らずとはこの事か。親ではないがそれを身を持って知った気分。
明日は藩邸に行ってもいい?とせがんでくる三津に溜息をついた。
「うわぁ,今面倒くさいって思ってますね?」
「分かってるじゃないか。」
わざとらしく大きく目を見開いた三津に澄ました顔をする。
愛らしい口がへの字に曲がった。
「……小五郎さんに迷惑かけるのは嫌なんで諦めます。」
腑に落ちないが仕方ないと口を尖らせた膨れっ面でご飯をつついた。
その姿すら愛らしく思えて桂の目尻は垂れ下がる。
今晩は仲直りのしるしにちょっかい出してもいいだろうか。
高杉に,年中盛るな!と説教して帰って来たのに人の事が言えたもんじゃない。
「何にやにやしてるんですか?」
澄ましていたつもりだが下心が馬鹿正直に顔に出てたらしい。どうせやらしい事考えてたんでしょと言い当てられた。
「やらしい事とは?」
皆目見当がつかないよと今度こそ澄ました顔で笑って見せた。何なら具体的に教えてくれないか?なんて冗談を交えて。
「……得意分野の癖に。」
じっとりした目で吐き捨てられた。その言葉に澄ました顔は苦笑した。
「随分本音を言うようになったね。さては九一が何か言ったね?」
そう言えば私が帰って来るまで二人で何をしていたんだい?
むくむく芽生えた嫉妬心が色男の表情を引き攣らせる。
「べっ別に何も無いです。」
「ほんっとに嘘つくの下手。まぁいいよ。寝る時にゆっくり今日の出来事を報告する時間をあげるよ。」
この腕の中でじっくり語るといい。
色男ににっこりと微笑まれたのに寒気がしたのは気のせいだろうか。
逃さないよ?
そう言ってるとも取れる笑ってない目にそれ以上の言い訳は阻まれた。
「何か言えない事でもしてた?ん?」
「なっ……ぁっ……いっ!そんなっ……こ……っと!
んー……もう無理ぃ……。」
本当だから許して。下から見上げてくる桂に懇願した。
自分の上に跨らせてしっかり腰を押さえて下から律動を送れば三津は呆気なく果てて全身を預けてくる。
「そう,何もないならいいんだ。」
自分の上に倒れ込んできた体を抱き締めて愛おしそうに髪を撫でる。肌を通して三津の荒い呼吸が響いてくるのに酔いしれた。
『……嘘つくのしんどい……。』
隠し事するより素直に吐き出してしまえば良かったと今更襲ってくる後悔。
多分素直に言っても同じような罰を受けただろう。手加減なしの激しい罰。
だとしたら嘘をつく罪悪感なんてない方が良かった。
「うぅ……疲れたぁ……。」
今日一日本当に疲れた。
想定外の秘め事が二つと予定外の鬼ごっこ。
久しぶりの全力疾走の果てに容赦のない仕打ち。
倒れ込んだ桂の胸の上で三津は規則正しい寝息を立て始めた。
「おいおい最中に寝る?」
中途半端にされた私はどうすればいい?
「全く……。」
自由過ぎるにも程がある。こんな事は初めてだと寝顔を見て思うが,
『そんな事言えば昔の女と比べないでって怒るだろうなぁ。』
根に持たれるのは勘弁だが本音でぶつかって来てくれるなら,ひたすら謝るのも悪くない。翌朝目を覚した三津は絶叫しかけて口を手で塞いだ。
何も纏ってない体がほどよい温もりに包まれて,目の前には静かに寝息を立てる整った顔。
ぽち、なにをしている?たまと合流し、作戦を実行に移すんだ」
おれたちがやってくるのに気がついた俊冬は、ことさらおおきな声で俊春に命じた。
命じられた俊春は、まずはおれたちをみた。
その顔色は、植髮 毛囊 昨日のときとさほどかわりはない。つまり、顔色は最悪である。
いくらタフで回復力がはやいとはいえ、創作の世界にでてくるようにあっという間に傷や病が治るというわけにはいかない。
もっとも、俊春本人か俊冬が回復系の魔法とかを駆使できるんなら話は別だが。
「ぽち、はやくいけ」
俊冬は、耳のきこえぬ俊春の気をひいてから再度命じた。
俊春は、俊冬をみてからまたおれたちの方をみた。
かれの心の葛藤を目の当たりにした瞬間、俊冬にたいして怒りがわいてきた。
「承知」
その瞬間、俊春がかぎりなくちいさな声で命令を了承した。
「兼定兄さん、大丈夫。にゃんこと二人で大丈夫だから。兼定兄さんは、主計のいうことをきいてあげて」
かれは、おれの脚許にいる相棒に唐突にそう告げた。
いまのは、なにかのメッセージなんだろうか?
残念ながら、おれにはわからなかった。
それから俊春は、俊冬が演じる副長にたいして一礼して消えた。 俊春はあれだけの傷を負っていながら、誠に軍艦一隻を沈めることができるのだろうか。
いや……。
俊春ならば、沈めることはできる。
心配なのは、かれがそれをすることによって、どれだけのダメージを負うかである。
「なにをぼーっと突っ立っている?揃いも揃って、まだ寝とぼけているのか?」
副長の笑いを含んだ怒鳴り声に、はっとしてしまった。
あらためて副長をみた。
中島や伊庭のいう通り、副長である。どこからどうみても副長である。これ以上にないっていうほど新撰組の副長にして、箱館政権の陸軍奉行並の土方歳三である。
頬の傷も目立たない。
これならば、だれだってだまされてしまうだろう。
新撰組の隊士たちも、京時代からいる古参以外はわからないかもしれない。
ましてや、新撰組以外のには、「これぞ土方歳三」というふうにしかみえないだろう。
「弁天台場が孤立しかけている。助けにいくぞ。そのまえに、千代ヶ岡陣屋で添え役のと合流する。二人は、額兵隊を率いているはずだ」
大野は、を向けてから問う。
「そうであった。主計がいうには、この蝦夷に金塊があるらしい。勘吾、八郎、鉄と銀と金塊探しでもやっていろ。兼定っ!」
かれは不可思議なことをいうなり、軍服の胸ポケットからなにかを取り出した。それから、それを宙に放り投げた。
そのなにかは、キラキラと陽光を反射させつつ宙を舞う。
相棒がジャンプし、見事それを口にくわえた。
よく見ると、鍵である。
これって、本物の副長を閉じ込めている部屋の鍵ってことなのか?
「わかったよ、土方さん。あんたが戻ってくるまでに、一生喰っちゃ寝できるだけの金塊をみつけておくさ」
「歳さん、愉しみにしていてください」
蟻通と伊庭も、その鍵に気がついたようである。
二人は了承し、相棒とともに、いそいそと五稜郭内へ入っていこうと踵を返した。
そのときである。
「土方君っ!」
五稜郭内から、榎本と大鳥がでてきた。もいる。
春日は、陸軍隊の隊長を務める元幕臣である。
史実では、かれは田村を養子に迎えたとある。
が、実際のところはそんな話はでなかったらしい。
ちなみに、春日家には田村との養子縁組の話は伝えられていないという。という唐津藩士だった男である。仙台で入隊し、いまは添え役になっている。
そして立川は、安富から文を託されて終戦後に箱館から脱出しようとして失敗し、捕まってしまう。
結局、その文は沢が届けることになる。
沢と久吉には、文だけではなく市村が届けるはずだった「兼定」と、例のムダにカッコつけた写真を託すことになるだろう。
「おいおい、どうした?才助、はやく「竹殿」に乗りたいのだがな」
「わかっています」
安富はぶっきらぼうにいい、「竹殿」の手綱をひっぱった。
が、「竹殿」が後ずさりしはじめたではないか。